日本百名山を撮る! 山の魅力伝える新しいフリー素材のプロジェクト。登山者インタビュー

日本百名山を撮る! 山の魅力伝える新しいフリー素材のプロジェクト。登山者インタビュー

2020年8月10日(山の日)に、「山岳写真家のRED SUGAR が100名山すべての山を登って撮ってくる!」という自主企画をリリースしました。

この企画は、山岳写真家の「Redsugar」さんが、日本の名峰百座を綴った著書「日本百名山(著者:深田 久弥)」で紹介した山々を自ら登り、その景観を写真素材で配布していくプロジェクトになっています。

当サイトでは、これまで各カメラマンが撮影した富士山や岩手山の写真(いずれも100名山の1座)などはありましたが、特定のカメラマンが100名山すべてをひとりで登頂して回り、撮影した写真をフリー素材で配布する企画は業界でも初の試みとなっています。

現時点で100座中、80座が登頂済み、残り20座に向けてご本人にインタビューをしました。

日本全国の名山を回る旅、登山への想い

ぱくたそ運営チームが、山岳写真家の「RED SUGAR」さんにインタビューした内容となります。

---- この企画がリリースされるまで、どのくらいの期間がかかりましたか?また撮影した枚数も教えてください

Redsugar

元々本格的に登山を始めたのが2014年の冬、ほぼ2015年の年明けくらいからなのですがそこから数えると5年から6年くらいになります。

ぱくたそで百名山を素材化しましょうという話をいただく前までに百名山は60座くらい登らせていただいていました。

写真はブログの記事を書くために必要で始めたのですが、使えない写真も含めると15万枚くらいになるかなと思います。

(詳しくは、Redsugarさんのブログを確認してください)

---- 思い出の山やエピソードを教えてください

最近思い入れのある山やエピソードが増えてきたので、一つに絞り切れないのですが初期だと皇海山クラシックルートを藪が整備されてない5月に歩いた登山......

岩肌に作られた道を歩く皇海山クラシックルートのフリー素材



12時間以上歩いていて、栃木県の山の中にある道を示す指導標が一時期怖くなりました。

最近だと大雪山トムラウシ縦走と大台ケ原から大峰山をつなぐ近畿遠征ですね。

故郷北海道の大雪山を縦走した登山では、やはり北海道の景色は内地にはない雄大さがあると感じました。 大峰山では、縁が薄い西国に行くという事で、関西弁が飛び交う登山道や降り立った駅で「旅」を感じました。

印象に残ったエピソードだと、第一子が生まれる前日登った岩手山。

下山してきた翌日奥さんと散歩したら陣痛が来たので......
忘れられません。

---- 100名山の撮影で気にしていることやこだわりを教えてください

百名山を登っている人はたくさんいると思うのですが、僕の場合少し違うのは「全ての山が快晴、もしくは晴れ」であることだと思います。

僕は百名山すべての山頂で快晴か晴れという所に重点を置いて撮影をしています。山の姿かたち、そこから見える景色をしっかりと見ておきたいのです。 それと、これは第二の条件なのであまり重視はしていないのですが山にはそれぞれ旬な時期があると考えており、なるべくその山が一番輝く旬な時期に登るという事を意識しています。

---- 天気が変わりやすい山で快晴を条件に撮影していることの難しさ(天候のチェックなど)を教えてください

街の天気と山の天気は全く違うので、登山系の予報サイトをいくつか参照しています。天気予報で毎月1000円くらい課金してます......。

毎日17時のヤマテンさんの更新。SCWというサイトの詳細、広域の更新時刻毎のチェック。その他、tenki.jpの登山天気アプリ、windyyamayamaGPV等のサイトで相互にチェックしてそれぞれのサイトでの予測があっているか、高度別の雲の量の予測値などを見ながら行くか、行かないかを決めている感じです。

特に、晴れと書いてあっても「空が8割雲に覆われてても晴れ」なので雲の量や湿度は気にしています。梅雨時期から太平洋高気圧が張り出してくる夏本番までは、予報が変わりやすいので常にドキドキしているような状態が続きます。

何よりも、複数のサイトで裏を取りながら自分の中での「行くか、行かないか」を決断するのが本当に大変というか、つらい作業です。非常に難しい推理ゲームというか、どの予報を信じるのかを常に問われるんですね。その結果、曇ってしまえばそこまでの旅費、小屋代、食事代......そして貴重な休日や有休、撮影の機会まで棒に振ってしまいますから、天候を読んでから「決断する」ストレスは半端ないです。

会社やクラスでもめ事が起こった時に、関係者全員が別々のことを言っていて誰の言葉を信じるか、誰の味方をするかみたいなことを常にやっているような......そんな感じで天気予報を各種読んでいます。

毎日やっているのかといわれると、夏山シーズンだと休みがとりやすい金曜と月曜を入れた週末が大体登山予定日なのですが。日帰りが可能な山もあるので、ほぼ毎日が射程圏内に入っていて結局ずっと天気予報を気にしている感じになっています。

大体6月くらいから10月2週目くらいまでは天気予報を毎日ずっと見ている感じになりますね。それと冬山に行って撮影したいときは、1月から3月頭くらいまでは同じように天気を見ています。

天候には本当に悩まされます、宿をとるのも一苦労ですし外した際に合計で数万円はドブに捨てる感じになります。アルプス、上信越、東北で常に別のプランを常に持っておいて晴れると思われる場所にすぐに行けるようにしておかないと天気を逃してしまうので常に複数のプランから晴れる可能性が高い場所をピックアップしています。

---- 季節を感じられる写真でRED SUGARさんのお気入りにを3枚紹介してください

定番ではあるのですが、那須岳の姥ヶ平から見た那須の写真とかは好きです。

紅葉って1週間か2週間くらいしか奇麗な時期がないのですが、ちょうど一番紅葉がきれいな時期を狙っていて、一度目はガスってしまったんです。悔しくて、その数日後に連続して那須岳に行ってようやく撮れた晴れ+紅葉の全盛期という写真です。

姥ヶ平の紅葉(那須岳)のフリー素材



花や紅葉は適期が大体2週間くらいしかないので、その中で晴れる日を予測し 晴れた日にいかにその場に立ってられるかという難易度があります......。

次にすごくレアな写真では、悪沢岳のお花畑です。

悪沢岳は普段植生保護のため、7月の中旬には柵が張られてしまうのですが僕が歩いた際はこの柵を張る人たちよりも早く悪沢岳の避難小屋に到着したんです。さらに高山植物が例年より2週間早く満開になっていたため柵を気にすることなく悪沢岳のお花畑を撮影することができました。

カールに咲き乱れる高山植物(悪沢岳)のフリー素材

悪沢岳の避難小屋の管理人さんに話を聞くと「十数年に1度あるかないかの幸運ですよ」といわれました。しかもこの年はちょうど悪沢岳のお花が当たり年で、カール一面を白と黄色の花が埋め尽くしていたのを覚えています。なので、たぶんこれと同じ写真はそうそうないんじゃないかなと......。 最後は雲取山でしょうか?

東京都最高峰の雲取山なのですが、撮影した年以降こんなに積雪があった年はなかったはずです。僕が登った年は積雪が比較的多く、前日の降雪と翌日の放射冷却の影響でサラサラの雪が舞う中の朝焼けが見られました。

黄金色の朝日と雪景色(雲取山)のフリー素材

さらにそのあと石尾根まで縦走するのですが、木々は樹氷と雨氷であたり一面氷の世界となっていました。昨今の暖冬だとなかなか見られない景色なんじゃないかと思います。

---- この企画を始動したきっかけを教えてください

ぱくたそさんとお話をさせていただいている中で、写真をブログや素材だけで終わらせておくには惜しいという話があって。

百名山全山快晴という事を目指しているなら、企画化して楽しく盛り上げようという話からどんどん進んでいったかなと......。 楽しそうだなと思った反面、岩木山や八幡平といったもう一度撮影しに行かないとダメな山もあったので、ちょっと焦りがいまだにあります。

---- この企画を通じて、今後どのような活動を考えていますか

Redsugar

コンテンツ作りやモノ作りが好きなので引き続きブログや、個人の写真集の作成などをしていきたいなと思っています。

展示会とか一度はやってみたいので、百名山すべてを快晴で撮影できたら写真をプリントして展示会をしてみたいですね。

---- のこり20座、今後トライしていく名山で最難関だと考えている山と最後に登頂を考えている山を教えてください

最難関はやはり「幌尻岳」だと思います、百名山でも最も難易度が高いといわれてますがその通りだなと......。

2020年にチロロ林道からの登山を計画したのですが、天候が合わず決行できませんでした。できればトッタベツから稜線を歩き続けるチロロ林道を使いたいのですが、ヒグマの危険もあるので新冠から登ることも考えないといけないのかなと思っています。

日高山脈は幼いころからずっと見てきた山なので、幌尻岳以外にも十勝幌尻岳、芽室岳と登りたい山が沢山あります。残っている山の多くが遠征系の山になってきているので、仕事と家族の時間の中から何とか 隙間を見つけ出していくしかないかなという感じになってきています。

最後の山は......妻と話していると、多分宮之浦岳になりそうです。妻の思い出の地が屋久島なので、通過点として登るわけにはいかないので、そこを最後にした後に家族で月山や蔵王に凱旋登山しに行きたいですね。

---- 最後に企画への意気込みやファンの方、利用者にひとことお願いします。

ブログを首を長くして待っていらっしゃる方々や、tiwtterで僕のことを見ていらっしゃる方々もいるかと思うのですが、

百名山の素晴らしい景色を快晴の空の元撮りきって誰もが知って楽しめる素材化すること、そしてその道中の小話をブログとかで書いていければなと思います。

百名山や山登りに興味のある人に役立つ情報を発信していけるよう、コンテンツを作っていけたらと思っておりますので。何卒、応援いただけますと幸いです。

Redsugarさんありがとうございます。

100名山すべてをフリー素材で配布する!連載企画

この企画は、これまでリリースしてきた企画コラボの中でダントツに枚数が多く、もっとも過酷な連載企画となります。

インタビューでもお話していただいたように、この企画は相当な労力と時間、また登山のスペシャリストであっても危険と隣り合わせな環境下での撮影を行っています。素晴らしい景観を届けてくれる「Redsugar」さんの写真を見るだけでなく、その過程も含めてぜひ応援していただけたら嬉しいです。下記、カメラマン情報となりますのでフォロー等をお願いします。

 Redsugar カメラマン情報
 red_sugarさん (@sakemaro_red) / Twitter

尚、ぱくたそでは、登頂ごとに「ぱくたそブログ」上にて、のこり20座のカウントダウン記事をお知らせしていく予定です。こちらも合わせてチェックしてください。

今後も引き続き「山岳写真家のRED SUGAR が100名山すべての山を登って撮ってくる!」をよろしくお願いいたします。